現代地方自治の理論と実践/岐阜大学地域科学部 山本公徳
現在、例えば国政選挙で主要政党が掲げる選挙公約・マニフェスト等を見ると、「地方分権」や「地域活性化」についての項目がほぼ間違いなく盛り込まれている。地域の行方は大きな政治課題となっているといえる。「地方分権」や「地域活性化」はいまや現代政治における圧倒的なプラスシンボルである。
しかしそうした政治状況はずっとむかしからあったわけでもなく、日本におけるその出現は20世紀末から21世紀初頭のことであった。その理由の一端は、第二次世界大戦以降に多くの先進諸国が目指してきた「福祉国家」という国家のあり方が、必ずしも地方分権と適合的ではなかったことにある。「福祉国家」は、「ナショナルミニマム」という形で全国一律の行政サービス水準を確保しようとする点で、あるいは所得再分配政策が自治体単位では効果に乏しく「国民経済」を単位とせざるを得ないという点で、中央集権を特徴とせざるを得ないところがあった。
ここから二つの問題が生ずる。
第一は、福祉国家と「地方分権・地方自治」とは、本当に相容れないものなのか、両立しうるとすればそれはどういう姿をとるのかという問題である。これを検討したのが「『地方分権』の批判的分析視角に関する理論的考察-福祉国家型地方自治に向けて-」(125号:2020年2月)である。
第二は、現代日本で進められている「地方分権・地方自治」は、どんな政治的性格をもっているのかという点である。「地方分権」は、「福祉国家」と緊張関係にあることから、「アンチ福祉国家」の政治潮流から台頭してくることがある。現代日本の「地方分権」は、そういった性格のものではないのか?-この点を検討したのが、「21世紀の社会保障改革は何をめざすか~社会保障における「地域」と「新自由主義」~」(127号:2020年10月)、および「『自治体戦略2040構想』と地方自治・公務労働」(129号:2021年6月)である。
また、「2018年岐阜市長選挙と岐阜の政治構造」(120号:2018年4月)では、上記の問題とは離れた視点から、岐阜市長選挙を素材として、地域政治の実証的分析を試みた。