法律・条例などの諸問題/岐阜大学地域科学部 三谷 晋
1999年の地方分権一括法によってそれまで垂直関係であった国と地方の関係が水平関係に大きく変わった。その結果、当然であるがこれまで以上に自治体は責任を負うとともに、国に先駆けて様々な制度をつくる機会を得たといえる。つまりこれまで以上に自治のあり方が地域住民から問われるようになってきたといえる。
こうした流れにある自治の現場では、様々な事案が懸案事項となっていることはいうまでもない。当センターではタイムリーな問題から経済・政治体制の問題に至るまでかなり広範囲にわたりテーマを設定して検討を加えてきた。
地域における差別、特にジェンダーをめぐる問題については、岐阜県内の自治体の男女共同参画の取り組みに関して、佐藤延子(118号:2017年、113号:2015年、110号:2014年、106号:2013年、103号:2012年、98号:2011年、94号:2010年、90号:2009年)やLGBT問題の検討として河合(124号:2019年)がある。これらは女性活躍や性の多様性の問題として自治体が取り組まなければならない事項として取り上げている。
教育の観点からの検討として、河合良房が全国学力・学習状況調査問題について(87号:2008年)、ブラック校則問題や家庭教育支援法案の問題、教育委員会制度改革等について検討(122号:2019年、120号:2018年、110号:2014年)し、労働者・公務員の権利の視点からの検討として、労働判例概観(河合 128号:2020年))の他、パワハラ等のハラスメント(河合 117号:2017年))、非正規雇用に関する官製ワーキングプア問題(河合 115号:2016年)、関連して公契約法と公契約条例問題(河合 107号:2018年)、公務員が受ける悪質クレームについて三谷晋(130号:2021年)、日の丸君が代事案における職務命令・懲戒処分について(三谷 117号:2017年)がある。
司法制度についても、「司法を考える」の4回シリーズ(河合 80号:2006年、79号:2006年、78号:2006年、77号:2005年)、ADRの紹介と検討(河合 99号:2011年)、地域司法計画について(河合 91号:2009年)、改正行政事件訴訟法の見直しについて(三谷 105号:2013年)などがある。
国と自治体が法令解釈や条例制定の場面で遭遇する事例を通して地方自治の本旨の現状を示すものとして、沖縄辺野古問題(三谷 124号:2019年))、風俗案内所規制(三谷 119号:2017年)、ふるさと納税訴訟(三谷 128号:2020年)等がある。
住民自治や住民との協働について示すものとしては、パブリックアーカイブについて富樫幸一(125号:2020年)、池田町の取り組みについて早田清宏(115号:2016年)、協働理論の紹介とその意義について(三谷 114号:2016年)、市民との協働のガバナンスの観点からは辻山幸宣(89号:2008年)、自治基本条例と議会基本条例における協働の検討(三谷 122号:2019年)がある。
自治の現状及びこれからの自治が向かう方向に関して、まず高橋弦(115号:2016年)は行きすぎた新自由主義の後の市民社会像をうらない、地域自立の現像(高橋 121号:2018年)、「地域主権改革」そのものについての検討(河合 104号:2012年)があるほか、自治体戦略2040構想を検討したものとして山本公徳(129号:2021年)、福祉国家型地方自治の実現のための理論的考察(山本 125号:2020年)、社会保障の最前線に立たされる自治体にとっては最大の関心事となっている社会保障改革について「地域」と「新自由主義」の関係について扱うものとして(山本 127号:2020年)がある。
その他、福祉分野に関して、岐阜県における医療保険をとりあげたものとして高橋弦(101号:2011年)、医療保険制度の再構築を考える際の施行枠組み(高橋 99号:2011年)、後期高齢者制度の岐阜における検討(高橋 93号:2009年、90号:2009年)、社会改革や社会市場の意義を検討(高橋 114号:2016年、112号:2015年、108号:2013年、105号:2013年)等がある。